未来日記(1)は失敗作なのか?


『12人の未来予知能力者による殺人ゲーム!』


というキャッチコピーを読んだ時思った。
「そんな殺伐としたテーマは好きだ!」
そして、その文章だけではどんなストーリー展開なのかが予想がつかなかず、そこにも興味をそそられた。


キャッチコピーを見たエキナカの書店にはポスターしかなかったので、改札を出て書泉グランデまで足を伸ばして購入、電車の中で読んだ。


が、読み終わった後に残ったのは違和感。
いや、もっとあいまいなもやもやとした気持ち。


未来日記は全体的に肩すかしだったのだ。
『12人の未来予知能力者による殺人ゲーム!』というテーマは刺激的なのに、画面からはその刺激的さが伝わってこないのだ。


なぜだろうとしばし考えて浮かんだ考えは。
「見せ方がうまくないんじゃないだろうか?」
だった。


未来日記 (1) (角川コミックス・エース (KCA129-5))

未来日記 (1) (角川コミックス・エース (KCA129-5))

12人の未来予知能力者による殺人ゲーム!
殺さなければ殺される。生き残るのは果たして誰だ!?        

天野雪輝は、日記が趣味の中学生。ある朝彼は、未来の自分の日記が携帯に打ち込まれているのを見つける。だが読み進めた彼が目にしたのは自らの「死」の記述。彼は知らぬ間に、未来の日記を巡るサバイバルゲームに巻き込まれていたのだ…。敵か味方か、雪輝を狙うストーカー少女・由乃を交え、未来予知能力者12人による殺人ゲーム勃発!

web.KADOKAWA未来日記(1)内容紹介


記事を書いて行く上で分かり易いように、上の公式ページよりつっこんだ内容紹介をしておきます。
未読の方はお気をつけ下さい。


未来予知能力者と言っても、自然に頭に未来が流れ込んでくるような性質のものではない。
デウスが、携帯にこれからつけるであろう日記が90日間表示されるようにしたのだ。
その携帯を持つものが雪輝を含めて12人いる。
その12人がデウスの変わりに「時の神」になることをかけて殺しあうというもの。


日記の内容は12人それぞれ違う。*1
例えば、雪輝は「自分の周りに起きるすべてのこと」。
由乃は、雪輝のストーカーなので「10分毎の雪輝の行動」
*2


■決めゴマにインパクトがない


ここが決めゴマなんだろうなという予測は付くのだけれど、そのコマにインパクトがない。
キャラクタの表情がそぐわなかったりするのだ。


例えば、雪輝が恐ろしそうにしているコマがある。
それは、前のコマの由乃を見て怖がっているはずなのに、その肝心の前のコマの由乃の表情がまったくと言って怖くない。
どちらかと言うと間がぬけているのだ。


由乃が手にしている「雪輝の行動の未来日記」を使えば、雪輝自身の身が助かるのではないかと言う場面で、雪輝はストーカー由乃に「俺を助けてくれ」と頼む。
ストーカーである由乃に頼むことは心に葛藤があり、それを振り切っての決心だったはず、しかし、そのコマの表情が平坦なのだ。
棒読みをしているかのようなイメージしか伝わってこない。


そして、最後近く、雪輝が刑事に銃を向けられ死を覚悟するシーンがある。
「自分の今までの人生は無駄だったけど、死はムダにしないで欲しい」というような台詞を言うのだけれど、台詞はいいのに、そのコマの表情がまたあいまいなのだ。
これから殺されようとしている人間の必死さがない。今までの人生を悔い、染むことだけでも有用に使ってもらいたいという必死な気持ちが伝わって来ない。


雪輝は最初デウスが友達のいない自分の想像の中の人物(?)だと思っているが、デウスは「自分は時の神であるので、お前の想像の中に住み着くこともできるはずだ」と言い出す。
これも衝撃に事実であるはずなので、そのコマが小さく描かれているだけなので、ここでもインパクトが足りない。


表情が平坦であることもそうだし、効果がうまく使われていないせいもあると思う。
未来日記」には集中線やおどろ線のなどの効果がうまく使われていない。
その点でも未来日記は迫力不足でインパクトがない。


これら、盛り上がりポイントである決めゴマで読者である私は盛り上がれなかったのである。
勢い余って前つんのめりの状態である。


■アングルが水平に近い


緊迫した話のはずなのに水平に近い安定したアングルが多いため、画面から緊迫感や臨場感が伝わってこない。
不安定さを覚えるくらいのアングルの方が、読者の心にもより不安感を持たせられると思う。
いっそ目立たせたい部分をデフォルメしたくらいの方がインパクトを与えられると思う。


例えば、刑事がテロリストから雪輝に拳銃を向けるシーン。
自分を助けるはずの刑事が自分を殺そうとしている、その衝撃があまり画面から伝わってこない。
雪輝が銃をつきつけられているという事実にぐぐっと人の目を引き寄せるためには、その部分を強調して描く必要があったのではないだろうか?


戦隊的にテーマがテーマだけにそれに見合った緊迫した迫力ある画面構成が必要だと私は思う。
作者のえすのさんは、けして絵が下手な人ではないのだけれど、迫力のある画面を描くには力不足の人ではなかっただろうか?


■これは単なる趣味の押し付けではないか?


いろいろ考えてみたのだが、上に書いたような欠点があるのなら、それは、雑誌掲載前に担当編集者から指摘があって直されていてもいいのではないだろうか?
未来日記」という作品そのものが悪いのではなく、私自身が勝手につくりあげた「未来日記」にそぐわない内容だったので、私が勝手に違和感を感じているだけなのではないか。


その可能性はありそうだ。


なので、この私の記事に不満を持った方は、これは1個人の感想であると位置づけていただけるとありがたい。


■これから未来日記を読み続けるか否か


未来日記をこれから一切見たくない訳ではない。
テーマはものすごく好きなので、先は見たいと思う。
しかし、このままなら古本屋に出るのを待つことになるであろう。


すでにアマゾンで350円でユーズドで出てたので定価で買ったのを後悔している。

*1:1巻ではまた4人しか出てこない

*2:この10分毎はかなり無理がある設定なので、そのをやりきる過程が描かれていたら、もっと由乃のストーカー加減が怖く思えたんじゃないかな